中央区人権啓発連絡会議だより こうろ 第36号 発行/中央区人権啓発連絡会議 事務局/中央区総務部生涯学習推進課 電話 718-1068 ●最初のページ ・「障がい者差別解消」について〜合理的配慮の提供とは〜  ここでは、障害者差別解消法や福岡市障がい者差別解消条例で義務とされている、「合理的配慮の提供」について説明します。  「合理的配慮の提供」とは、市や事業者が、事務・事業を行うに当たり、障がいのある人から社会的障壁を取り除いてほしいという求めがあった際に、その時々の状況に応じて、負担が重すぎない範囲で、社会的障壁を取り除くことです。  例えば、車いすを利用する障がいのある人から、お店で買い物をしたいが、建物入口に段差があってお店に入れないという意思の表明があった場合に、抱え上げたり、簡易スロープを使ったりすることなどで、お店に入れるようにすることです。  法及び条例の改正前の令和6年3月までは、事業者による合理的配慮の提供は努力義務でしたが、令和6年4月1日から、法的義務になりました。  なお、障がいのある人からの意思の表明がない場合でも、社会的障壁を取り除くことを必要としていることが明らかな場合は、障がいのある人に対して声かけを行うなどが望まれます。   法や条例改正前は、事業者による合理的配慮は努力義務であったため、合理的配慮を提供しない場合でも、法や条例違反にはなりませんでした。  法改正や条例改正で、事業者による合理的配慮の提供は義務となったため、その内容について、負担が重すぎるかどうかなどを検討することになります。  検討の結果、合理的配慮の提供を求められた内容が、負担が重すぎると判断される場合は、代替案を検討するか、場合によっては対応できないということも考えられます。その場合でも理由を説明し、理解を得るよう努めることが重要です。  障がいのある人から合理的配慮の提供を求められた場合、その内容が合理的配慮の提供に該当するかどうかは、いくつか留意点があります。 @事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること。 A合理的配慮の提供は、障がいのある人とない人との比較において、同等の機会の提供を受けるためのものになること。 B事務・事業の目的・機能・内容の本質的な変更に及ばないこと。 合理的配慮は実施に伴う負担が過重でないものとされており、「過重な負担」に当たるかどうかについては、個別の事案ごとに、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することになります。 考慮する要素としては、 ・事務・事業への影響の程度 ・実現可能性の程度 ・費用・負担の程度 ・事務・事業規模 ・財政・財務状況 などを考慮することになります。  合理的配慮の提供については、負担が重すぎない範囲で必要な配慮を行うことになりますが、障がいのある人と話し合い、代替案を含め、解決策を検討していくことが重要であります。このような双方のやり取りを建設的対話といいます。  例えば、車いすを利用する障がいのある人から、お店と道路に段差があり、お店に入れないため、入口に恒久的に利用できるスロープを設置するよう求められたとします。  一般的には、恒久的なスロープを設置するとなると、費用面から事業者にとっては負担が重すぎることになる場合が考えられます。  その場合には、事業者が障がいのある人に状況を説明のうえ、例えば、車いすと本人を抱え上げ、お店に入るよう対応することなど、解決策を互いに確認し合うやり取りが建設的対話に当たります。  いずれにしても、建設的対話により、実現可能な対応案を考えるため、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要です。「先例がありません」「特別扱いできません」「もし何かあったら」などは、断る「正当な理由」にはなりませんので、ご注意ください。  最後に、合理的配慮の提供の例をいくつかご紹介します。(【内閣府】障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針より抜粋) ・車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡す、高い所に陳列された商品を取って渡すなどの物理的環境に係る対応を行うこと。 ・筆談、読み上げ、手話、コミュニケーションボードの活用などによるコミュニケーション、振り仮名や写真、イラストなど分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通に係る対応を行うこと。 ・障害の特性に応じた休憩時間の調整や必要なデジタル機器の使用の許可などのルール・慣行の柔軟な変更を行うこと。 ・店内の単独移動や商品の場所の特定が困難な障害者に対し、店内移動と買物の支援を行うこと。 ●2ページ ・中央区人権啓発連絡会議主催 令和7年度中央区人権を考えるつどい  中央区人権啓発連絡会議では、暮らしの中に人権文化が根付いた社会について考える契機として、毎年「中央区人権を考えるつどい」を開催しています。  令和7年度は、福岡市立中央市民センター指定管理者(株)シンコー及び中央区役所との共催により、9月12日(金曜日)、中央市民センターホールにて開催しました。  第1部は、「ハンセン病の歴史と人権について」と題して、 国立療養所菊池恵楓園 園長 境 恵祐さんにご登壇いただきました。  ハンセン病は、かつて「不治の病」「恐ろしい伝染病」と誤解され、患者や家族が長い間、深刻な差別と偏見にさらされてきました。しかし現在では、医学の進歩により治る病気であり、感染力も極めて弱いことが明らかになっています。それでもなお、歴史の中で生まれた偏見は根強く残り、元患者や家族の方々を苦しめ続けています。講演では、ハンセン病の正しい知識と歴史、そして人権の視点から私たちが学ぶべきことをお話いただきました。 ▼感染症としての正しい理解  ハンセン病は、らい菌による慢性感染症であり、その感染力は極めて弱く、成人が感染・発症することはまれです。現在は多剤併用療法により外来で治療できる完治可能な病気となっています。かつて“不治の病”と恐れられていた時代の認識は、科学的知見が不十分だった時代背景によるものです。 (講師である 境 恵祐さん の写真) ▼隔離政策が生んだ深刻な人権侵害  日本では、1907年の「ライ予防二関スル件」を皮切りに、1931年の「癩予防法」、1953年の「らい予防法」へと隔離政策が強化されました。無らい県運動や偏見をあおる広報により、患者や家族は長期間にわたり社会から排除されました。 また、療養所では患者作業や懲戒検束、不妊手術の強制など重大な人権侵害が行われました。特に優生保護法のもとで強制不妊が合法化された事実は、当事者の人生を根本から奪うものでありました。 ▼遅れた政策転換と社会の偏見  治療法が確立しても隔離政策は継続され、法の廃止は一九九六年まで遅れました。2001年の国賠訴訟判決では、「遅くとも昭和35年(1960年)までに隔離は中止すべきだった」と司法が明確に指摘しています。しかし偏見は根強く、2003年には宿泊拒否事件が起き、患者側が批判を受けるという構造的差別が浮き彫りとなりました。 ▼人権を軸とした社会づくり  2008年にはハンセン病問題基本法が成立し、医療体制の整備や名誉回復、偏見解消が国と自治体の責務となりました。しかし、差別の背景にある「人権への無理解」が変わらなければ、問題は形を変えて続いていきます。偏見は知らないことから生まれ、そして無関心がそれを助長します。自分が差別する側にならないためにも、歴史から学び、日常の中で人の尊厳に気づき続ける姿勢が求められます  第二部は、映画「あん」の上映です。  映画『あん』は、2015年公開の河P直美監督によるヒューマンドラマ。 (あらすじ)  どら焼き屋「どら春」の雇われ店長として、単調な日々をこなす千太郎(永瀬正敏)。そんな「どら春」に、求人募集の貼り紙を見た徳江(樹木希林)がやってきました。  彼女を適当にあしらう千太郎でしたが、手渡された手作りのあんを舐めた彼はその味に驚き、どらやきの粒あん作りを徳江に任せることにしました。  あんの味が評判となり、店はあっという間に大繁盛しましたが、かつて徳江がハンセン病患者だったという噂が広まり、客が一気に離れていきます。この状況に徳江は店を去ります。 千太郎と、店を訪れていた中学生のワカナ(内田伽羅)は、自分たちに「生きる意味」を教えてくれた徳江を訪ねて療養所へと向かいますが、そこで彼女の過酷な人生と、それでも失われなかった「生命への慈しみ」に触れることになります。 ●3ページ ・第54福岡市人権を尊重する市民の集い  昭和23(1948)年12月10日、世界人権宣言が国連総会において採択されました。  福岡市では、これにちなんで毎年12月4日から10日までを「福岡市人権尊重週間」と定め、福岡市人権尊重行事推進委員会によるさまざまな啓発活動を展開しています。  その一環として、令和7年12月9日(火)、福岡市健康づくりサポートセンターにおいて「人権を尊重する市民の集い」が開催されました。 それで、よかよか 〜寛容の精神が醸成される社会へ〜 学校法人立花学園立花高等学校校長 齋藤 眞人さん (講師である 齋藤 眞人さん の写真)  今回は、学校法人立花学園立花高等学校校長、齋藤眞人先生をお招きし、ご講演いただきました。  齋藤先生は、平成十六年に教頭として立花高等学校に赴任されました。立花高等学校は不登校生徒自立支援の教育方針のもと、「心の癒し」に重点を置いた教育実践が大きく注目され、現在、心のよりどころを求める子どもや親たちから支持されています。自治体や教育関係者からの多くの講演依頼に応え、「いいんだよ」の共感的理解の大切さを精力的に全国各地で講演されています。当日は、「それで、よかよか〜寛容の精神が醸成される社会へ〜」と題して、齋藤先生にお話しいただきました。 「よかよか」がひらく、人にやさしい社会 ■すべての人が「そのままでいい」と言えるように  私は、人権を“特別な誰かのためのもの”ではなく、「自分を含めたみんなのための考え方」として捉えています。その根っこにあるのが宮崎弁の「よかよか」“あなたはそのままでいい”。その言葉が、子どもも大人も包み込んでくれます。 ■一歩を踏み出した子どもたちの勇気  立花高校には、不登校を経験した子どもたちがたくさん入学してきます。制服が入らない、玄関で動けなくなる。そんな葛藤の末に受験会場に足を運ぶ姿は、どれもかけがえのない挑戦です。「名前を書けば合格」と言われる学校であることを誇りに思うのは、その一歩の大きさを知っているからです。 ■“できない”のではなく、“できる方法に出会えていなかった”だけ  立花高校の教室には必ず針時計とデジタル時計の二つがあります。なぜかというと、針時計が読みづらい子がいるからです。時間を守れず叱られてばかりだった生徒が、デジタル時計ならすぐに時間を読み取れたとき、「責めるより、できる方法を用意すること」の大切さに気づかされます。子どもたちは、環境が整えば見違えるほど力を発揮します。 ■形の違うおにぎりが教えてくれたこと  寺子屋(学習支援の場)で生徒が握った、大小さまざまに崩れたおにぎり。けれど子どもたちは「小さいのが好き」「大きいのがいい」と、自分の好みに合わせて笑顔で選んでいきました。“違い”は劣っているのではなく、“選べる豊かさ”になる。整ったものも、バラバラなものも、どちらも大切な存在です。 ■無理に立たせない「伴走型」の支え方  立花高校が大切にしているのは、子どもが自分で立ち上がりたいと思ったときにそっと差し出す手。大人の都合で引っ張り上げるのではなく、“一緒に歩く”という姿勢です。その関わりの中から、引きこもりだった子が絵の仕事を始めるなど、確かな成長が生まれています。 ■社会が寄り添えば、才能は花ひらく  卓球の才能を持った知的障がいがある生徒が、パラリンピックで銅メダルを獲得した背景には、働きながら卓球に励めるように環境を整えた会社の支援がありました。「この子に仕事を覚えさせようと思ったら、丁寧に説明する俺たちの方が育つ。」と言った社長の言葉は、周囲の寄り添いが子どもと大人の双方を成長させることを教えてくれます。 ■同じ出来事でも、受けとめ方で世界が変わる  深夜徘徊で補導された1年生。けれど、その知らせに「カラオケに行くような友達ができたんですか。夢のようです。」と涙した保護者がいました。五年間ひきこもっていたわが子の、小さな一歩を喜んだのです。この出来事を美談にするつもりはありませんが、事実はひとつでも、その意味は大人の受けとめ方で大きく変わります。 ■「もう頑張れない」と言える場所に  「もう頑張れない」と感じていた生徒が、先生の「もう頑張ってるよ」という言葉に涙したエピソードもあります。誰も悪くないのに、誰も救われていない。それが今の子どもたちを取り巻く現実なのかもしれません。 ■「迷惑をかけていい」社会へ  私は卒業式で必ずこう伝えます。「人に迷惑をかけ続けなさい。あなたの苦手は誰かの得意で助けてもらいなさい。あなたの得意は誰かの苦手に役立てなさい。」自立とは「一人で何でもできること」ではありません。助け合いながら生きていく力です。 ■泣けない人にこそ寄り添いたい  私はこう思っています。「人は本当に苦しいときほど、苦しいと言えない。だからこそ、泣けない人にこそ寄り添いたい。」きついときに「きつい」と言える。苦しいときに誰かに頼れる。そんな寛容さに満ちた社会を、私たちはつくっていかなければなりません。そして、子どもたちが「そのままでいい」と言われる社会が広がることを願っています。 私はこれからも「よかよか」を伝え続けます。 ●最後のページ ・人権尊重作品中央区入選作品  福岡市人権尊重行事推進員会では、12月4日から10日の福岡市人権尊重週間にあわせて、市内に在住または通勤・通学する方を対象に、ポスターや標語、作文などの人権尊重作品を毎年募集しています。  ここでは、寄せられた作品の中から、中央区内のポスター・標語の入選作品をご紹介します。(順不同) (ポスターの部)  ・小笹小学校3年生 仲田 紗梛 さん ・当仁小学校6年生 田籠 千人 さん  ・当仁小学校6年生 白倉 そら さん  ・当仁小学校6年生 米村 信之介 さん  ・当仁小学校6年生 高井 こころ さん   (標語の部)  ・絶対に 君はだれかの 宝物         高宮小学校5年生 諸藤 希一 さん  ・ぼう言は あい手がきずつく 自分もね    当仁小学校5年生 布目 紗久來 さん  ・差別なく 手をとりあって ゆく未来     福浜小学校6年生 村田 健真 さん  ・偏見の 眼鏡は捨てて 心見よう       警固中学校1年生 中原 舞子 さん  ・染まらない 好きな自分で 生きていく   警固中学校1年生 八尋 瑛吏子 さん  ・私の大事な人 あの人も誰かの 大事な人  警固中学校2年生 久保 梅華 さん ・中央区人権啓発連絡会議 構成機関・団体(順不同)  中央区人権啓発連絡会議は、中央区で活動している30の関係団体・機関で構成し、部落差別をはじめとするあらゆる差別の解消を目指して、「中央区人権を考えるつどい」の開催や、広報紙「こうろ」の発行など、人権を尊重し、人の多様性を認め合う明るく住みよいまちづくりの実現に向けて活動しています。  中央区校区自治協議会等代表者会  校区・地区人権尊重推進協議会(14団体)  中央区体育振興連絡会  中央区交通安全推進協議会  中央区青少年育成連絡会  中央区老人クラブ連合会  中央区子ども会育成連合会  中央保護区保護司会  中央区男女共同参画連絡会  中央区民生委員児童委員協議会  福岡市身体障害者福祉協会中央区支部  中央区小学校PTA連合会  中央区中学校PTA連合会  中央区中学校長会  中央区小学校長会  中央区公民館長会  中央区役所 ・編集後記  齋藤先生のお話を聞いて思いました。人生において意味のない時間などない。全てのことが、その人自身にとっては、大事な大切な時間なのだと。学校にいけない時間は、子どもにとっては、頑張りすぎた心を休める時間かもしれません。そっと寄り添いながら、その子が自分のペースで歩き出す日をあたたかく見守る──そんな思いにさせてくれた時間でした。